
UEFAはこれまで、ファイナンシャル・フェアプレーは欧州クラブサッカー界の未来のために不可欠なものだと強調してきた。さらにUEFAは、欧州の各クラブがこのシステムへの参画に向けた準備を整えつつあることに、特に歓迎の意を示してきた。ファイナンシャル・フェアプレーは、一般市民にとって最大の娯楽であり続けるサッカーというスポーツに安定性と健全性をもたらすため、作られたプロセスである。
欧州サッカーの統括機関であるUEFAと各クラブの代表は25日、ニヨンに集まり、本格的に導入が始まったファイナンシャル・フェアプレー規則の包括的な概要説明を行った。さらにこの集まりでは、UEFA加盟53カ国のトップリーグに所属する650強のクラブの経営状況を網羅し、2010会計年度を対象とした第4回UEFAクラブ・ライセンシング評価レポートも提出された。
その中では、ファイナンシャル・フェアプレーの現状が説明されたほか、実際の規制や実施、サッカー界の利害関係者からフィナンシャル・フェアプレーに与えられる支援、フィナンシャル・フェアプレーと欧州連合(EU)の法制度の関係など、さまざまなトピックに関する主な問題について質疑応答が行われた。
ファイナンシャル・フェアプレーの目的は、UEFAクラブ・ライセンシングおよびファイナンシャル・フェアプレー規則に明記されているように、とりわけ、クラブサッカー界の財政にさらなる規律を導入すること、そして近年多くのクラブを苦境に陥れている浪費や理屈にあわないギャンブル的投資といった行為を抑えることにある。これらの施策の中で、各クラブは収支の均衡、言い換えれば“ブレーク・イーブン(支出を収入以内に抑えること)要件”の順守を義務づけられるほか、欧州クラブサッカー界の長期的な発展と維持のために責任ある行動を要求される。
クラブがファイナンシャル・フェアプレー規則を順守しているかどうかを監視するためには、クラブ・ファイナンシャル・コントロール・パネルが設置された。これらの規則は3年間をかけて段階的に導入され、2012、2013年度末の会計で各クラブが“ブレーク・イーブン要件”を満たしたかどうか査定され、2013-14シーズン中に評価が下される。そして2011年夏以降はクラブ・ファイナンシャル・コントロール・パネルが移籍金や人件費関連で発生するすべての支出を評価することになる。
ジャンニ・インファンティーノUEFA事務局長は、メディアデー終了後にUEFA.comの取材に応じ、こうしたステップの必要性を強調した。「我々はクラブサッカー界のために、ファイナンシャル・フェアプレーを必要としている。ファイナンシャル・フェアプレーはファンや一般の人々のためにも必要だが、クラブ、そしてクラブのオーナーのためにも必要な制度だ」
「近年のクラブでは、選手、監督、オーナー、ディレクター、マネージャーなど、すべての要素が入れ替わる。しかし、ファン、そして社会との絆は不変だ」と事務局長は続けた。「そしてこれこそ、我々が守らなくてはいけないものだ。特に財務上の数字については憂慮すべき傾向が続いており、対処しなければならない。欧州クラブサッカー界が今後も発展、繁栄するためには、安全で健全な環境の確立が不可欠だ」
インファンティーノ事務局長は、この制度に関して欧州のクラブから寄せられた支持と協力に対し歓迎の意を示した。「こうした協力関係は、ファイナンシャル・フェアプレー規則を作成した際、我々がクラブと共に、責任あるかたちで作り上げていったことを示していると思う」と事務局長は語った。「ファイナンシャル・フェアプレー規則は誰かを滅ぼすために導入されたものではなく、クラブを助け、良好で前向きな環境を作るために生み出されたものだ。すべてのクラブが満場一致してこの規則を支持しているという事実が、クラブも成熟し、責任ある態度をとっていることの現れと言える」
欧州クラブ協会(ECA)の理事であるオリンピック・リヨンのジャン=ミシェル・オーラス会長は、ニヨンでの会合で前向きなコメントを発した。「UEFAおよびミシェル・プラティニ会長は、サッカー界の経済にとって良くないスパイラルに疑問を投げかけるという勇気ある決断を下した。すべてのクラブとECAはその手順に合意している。長い道のりになるが、サッカー界にとって欠かせないプロジェクトだ」
同じくECAの理事であり、FCインテル・ミラノのゼネラルディレクター、エルネスト・パオリッロ氏は、今こそサッカー界の支出について議論するときだと強調する。「我々は、この分野に関する規則が必要だと確信している。UEFAと加盟クラブがサッカー産業のリストラに挑むのは重要なことだ。クラブの総負債を見れば、クラブ・サッカー界が直面している問題が分かると思う。今こそ改革をスタートさせるときであり、その準備は整っている」
メディアデーに際して基準となる報告を行ったインファンティーノ事務局長は、増え続ける経費が主な問題だと語った。「欧州プロサッカークラブの総収入は(2009年の)120億ユーロ(現在の換算レートで1兆2000億円)から(2010年の)128億ユーロ(同1兆3000億円)に増えている。このような産業がほかにあるだろうか?人気という点では、サッカー産業は非常に健全と言える。世界的に不況の今、このように収入が増え続けているのだから」
「問題はクラブの支出も(2009年の)133億ユーロ(約1兆3500億円)から(2010年の)144億ユーロ(約1兆4700億円)に増えていることだ。1部リーグで戦うクラブの56パーセントから純損失の報告があった。これはまさに深刻な警鐘だ。欧州サッカーを守るには、このような流れをすぐにでも改善する必要がある。毎年収入も支出も増えているような状況には、早急に対処しなければならない」
「欧州の経済状況とサッカー界の経済とを比べると、基本的に違う点が1つある」とインファンティーノ事務局長は続けた。「この数年、収入は毎年増えている。つまり欧州サッカーは健全な財政状態にあり、支出さえコントロールできれば問題はないはずなのだ。それゆえに我々はファイナンシャル・フェアプレー規則を導入しようとしている」
「数年前に加盟クラブと共にこの課題に挑んでいなければ、欧州クラブサッカー界の将来を憂うことになっていただろう」とインファンティーノ事務局長はまとめた。「しかし我々は行動を起こした。収入から見るに、人々のサッカーへの関心は高い。よって、我々は正しいことに取り組んでいるとポジティブな感触を得ている」
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