
UEFAは、欧州クラブサッカー界に関するクラブ・ライセンシング評価レポートの第3版を公表した。今回のレポートでは、UEFA加盟53サッカー協会のトップリーグに属する約650クラブが調査対象となった
『The European Club Footballing Landscape (欧州クラブサッカー界の展望)』と題された100ページ以上に及ぶこのレポートは、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語の4カ国語で公表されている。今回は、欧州のクラブサッカーに影響を及ぼしている財務問題の抑制を目的としたUEFAのファイナンシャル・フェアプレー導入後という、重要なタイミングでの発表となった。
2010年のレポートでは、トップリーグの全クラブの90%に相当する664クラブの財務諸表を分析。情報の多くは、クラブ・ライセンシング要件の一つとして各国サッカー協会に提出されたものをクラブから直接入手して得た。
レポートは、ライセンシング状況、リーグの規模・構成、平均観客数とその推移、スタジアムの構造と稼働率、財務状態とピッチ上での成功の関連性、国ごとの移籍解禁期間の差異など、財務関係以外のテーマにも触れている。図表やQ&A方式を用いてわかりやすくまとめられており、例えば欧州各国リーグのアウェー勝利率の推移を示し、12番目の選手(サポーター)の影響力は衰えているのかという疑問を提示している。
レポート後半では、欧州全体、サッカー協会、クラブの各レベルで財務状況の詳細を分析。2009年は世界的な景気後退の中でも、トップリーグ所属クラブ全体の営業収入は4.8%伸びて過去最高の117億ユーロ(約1兆3000億円)に達したという明るいニュースがまず示された。しかし、財務問題の兆候もいくつか明示され、収益が増加した一方で、経費は9.3%増とそれ以上に拡大。クラブの収益性に深刻な影響を及ぼした。結果的に最終損失は全体で11億7900万ユーロ(約1280億円)と、2008年の約2倍に膨らんでいる。
さらに欧州のトップリーグ所属クラブの半分以上が最終損失を発表し、28%ものクラブが10ユーロの収入に対し12ユーロを支出するというレベルの大きな赤字を計上。8クラブにつき1クラブ以上の割合で、監査報告において事業の継続性に対する懸念が示された。この判断は大きな損失のほか、オーナーへの過度の依存や危ういバランスシートに基づくものである。
サッカークラブの費用で最も大きいのは選手の給与で、収入に対する比率は前年の61%から64%に上がった。手元資金が不足したことで移籍の動きは鈍り、移籍金収入への依存度の大きいクラブは財務面で打撃を受けた。
特に、フランス、ドイツ、ポルトガルのクラブなど、選手の流出が流入をコンスタントに上回るクラブの多くが厳しい状況に立たされた。推定8億ユーロ(約880億円)の移籍金が支払いが1年以上後となっている。レポートによると、ユース育成のための投資は依然低水準で、トップリーグ所属クラブは経験のある選手を使う傾向にあり、その結果、給与支出が上昇。あるいは、他のクラブが育成した選手を獲得している。
平均観客数は、大多数の国内リーグで横ばいまたは減少。厳しい経済状況やスタジアムへの投資不足が響いた。自前のスタジアムを所有しているクラブは、全体の19%にすぎず、この状況は、サッカークラブが生み出し得る収入のフローに直接的な影響を及ぼしている。クラブの大部分は最も重要ともいえる資産を自ら管理できず、試合日以外に十分な収益を上げられない状況にある。
上述した財務上の課題は、加盟53サッカー協会すべてのトップリーグ所属クラブに共通するものだとレポートは指摘している。その一方で、下位リーグの状況はさらに悪く、債務弁済不能や経営破綻のリスクはトップリーグのクラブよりはるかに高いと説明している。
このような状況の中、段階的導入が進みつつあるのが、新しいUEFAクラブ・ライセンシングおよびファイナンシャル・フェアプレー規則だ。その目的は、クラブの財務管理能力向上と収入・支出・投資のバランス強化にある。レポートでは、新規則が即時導入されれば、いくつかのクラブが適合できなくなると警告。特に、ファイナンシャル・フェアプレーのコンセプトの根幹を成す“ブレーク・イーブン要件(支出を収入以内に抑えること)”への適合が懸念されており、各クラブは将来に備えて今から規則を個別に導入する必要があると促している。
UEFAの財務基準は欧州カップ戦出場クラブに適用されるが、レポートは同様の措置や要件が欧州サッカー界の長期的発展のために国内リーグレベルでも導入されることが望ましいとしている。
新規則の実施により、多くのクラブが財務改善を迫られることになるとレポートは結論付けた。しかしながら、UEFAは、大会の公正性や財務規律、長期的安定性を保証するには、現在の問題への体系的な取り組みが必要になると考えている。
©UEFA.com 1998-2012. All rights reserved.
http://jp.uefa.com/uefachampionsleague/news/newsid=1585507.html