ベシクタシュ、冷静な試合運びで崩壊を阻止

これまで何度もリードを奪いながら逆転で敗退してきたベシクタシュは、今季のラウンド16ではこれを回避。チームを率いるシェノール・ギュネシュ監督は「すべてがうまくいくこともあれば、そうならないこともある」と淡々としているが、UEFA.comのチェティン・ジェム・ユルマズ記者が今回の勝因を分析した。

Cenk Tosun (Beşiktaş)
©AFP/Getty Images

ベシクタシュはこれまで、欧州の舞台で1点、2点、ときには3点のリードを奪いながら、逆転で敗退するケースが非常に多かった。だが今回は違った。

今回のUEFAヨーロッパリーグ・ラウンド16第2戦では、2-1とリードしていた前半に、先制点を挙げたバンサン・アブバカルが一発退場処分に。このときベシクタシュは、今度はオリンピアコスに逆転突破を許すのかと恐れたかもしれない。昔からのファンなら、ステアグル・ロシュ・ブラショフ(1974-75シーズン、UEFAカップ)やバレレンガ(1998-99シーズン、UEFAカップウィナーズカップ)を相手に逆転負けを喫した経験が忘れられないだろう。また、もっと若いファンにとっても、クラブ・ブリュージュ(2014-15シーズン、UEFAヨーロッパリーグ)やスポルティングCP(2015-16シーズン、UEFAヨーロッパリーグ)戦での逆転負けは記憶に新しいはずだ。

しかし75分、ライアン・バベルが空中戦で競り勝つと、こぼれたボールを拾ってネットに突き刺し、ブラック・イーグルス(ベシクタシュの愛称)の3点目をマーク。そしてファンの不安を吹き飛ばした。これでベシクタシュは第2戦のスコアを3-1、2試合合計でも4-2とし、後半ロスタイムにはジェンク・トスンがダメ押し点を挙げて突破を決めた。では、10人になったあと、シェノール・ギュネシュ監督はどのように選手を落ち着かせ、勝利に導いたのだろうか?

「腹が立つだろう。頭に血が上り、たくさんのことが頭をよぎるに違いない」と、指揮官は10人になったときの選手の心理状態を分析する。「だが、それが過ぎると、自分がやるべきことは何かと考えるようになる。友人からは『次の試合は最初から10人で戦えば、モチベーションがさらに上がるのでは?』という内容のメールをもらったよ。サッカーとはそういうものなんだ。すべてがうまくいくこともあれば、そうならないこともある」

Watch as ten-man Beşiktaş beat Olympiacos
ハイライト:10人のベシクタシュがオリンピアコスを下す

ギュネシュ監督は10人になって迎えたハーフタイムにも選手交代は行わず、アブバカル抜きの先発メンバーのままで後半15分までプレーさせた。さらに中盤の選手に対しては、深く引いてオリンピアコスの攻撃陣にスペースを与えないよう指示。そして60分を迎えたところでオウズハン・エジャクップに代わりネジプ・ウイサルを投入し、アティバ・ハッチンソンとコンビを組ませて中盤の強化を図った。この屈強な2人がオリンピアコスに試合を支配させず、サイドでもアドリアーノと圧倒的な存在感を誇るギョクハン・ギョヌルが、ベシクタシュを間延びさせようとする相手チームの試みを封じた。

さらに残り20分となったところで、スタジアムDJがサポーターに対し、今こそ立ち上がり、過去の勝利を思い出そうと呼びかけた。「ベシクタシュのファンのみなさん、我々にはこのスタジアムで、パリ・サンジェルマン、バルセロナ、リバプールを倒してきた実績があります!」この一言で観客は沸き返り、それから間もなく、チームは3点目を奪って落ち着きを取り戻した。

Şenol Güneş (Beşiktaş)
準々決勝進出を喜ぶベシクタシュの選手たち©AFP/Getty Images

アブバカルの退場後は右ウインガーとワントップの1人2役を引き受けたバベルは、試合を通じて効果的な攻撃を継続。そして2本目の枠内シュートでも見事にネットを揺らした。これを見て敗退が決定的になったと悟ったオリンピアコスの選手は、少なくとも3人がピッチに倒れ込んだ。アブバカルの退場後、どちらのチームがゴールを決めるかが勝敗の分かれ目になるとわかっていただけに、バベルのチーム3点目は大きな意味を持った。これに比べると、ジェンクの4点目は付け足しにすぎなかった。

試合終了が近づくにつれ、観客は勝利の立役者を称え、ギュネシュ監督の名前を呼び続けた。だが指揮官はこうした歓声も意に介さず、4-1とリードした後半ロスタイム3分になっても、指示したポジションを外れたジェンクを大声で叱咤していた。こうした細部まで手を抜かない姿勢や情熱を見る限り、今シーズンのベシクタシュにはこの日を上回る最高の夜が待っているかもしれない。